住宅ローンの連帯債務で妻が自己破産することも。離婚公正証書でも太刀打ちできない事情を解説します。
住宅ローンの連帯債務は離婚だけでは終わらない
不動産の名義を夫から妻に変更しても、住宅ローンの連帯債務はそれだけでは消えません。夫が返済を怠った場合、妻が金融機関から全額の返済を求められる事態も起こり得ます。
連帯債務の仕組み
多くの住宅ローン契約では、金融機関の承諾なく不動産の名義変更をした場合、期限の利益を失い、一括返済を求められる可能性があります。そのため、夫から妻へ、共有から単独へといった名義変更を、金融機関への確認なしに勝手に行うことはできません。名義変更を検討する場合は、事前に金融機関へ相談し、承諾を得たうえで、借り換えや契約変更の手続きを進める必要があります。この手続きを行わないまま離婚だけを成立させると、妻は連帯債務者のまま残ります。
連帯保証人と連帯債務者の違い
連帯保証人は、主たる債務者である夫の債務を保証する立場であり、それ自体は住宅ローンの債務者ではありません(民法446条)。ただし連帯の特約が付いた保証であるため、通常の保証人と異なり、催告の抗弁権・検索の抗弁権が認められていません(民法454条)。そのため、夫が返済を怠れば、金融機関は妻に対していきなり全額を請求することができ、結果として妻が返済を負う点は連帯債務者と変わりません。
一方、連帯債務者は契約成立の時点から、夫と並んで独立した債務者として、ローン全体に対する返済義務を負っています(民法436条)。連帯保証人が夫の債務に付随する立場であるのに対し、連帯債務者は最初から夫と同格の債務者である点が異なります。また、夫の分まで返済した場合、連帯債務者は自己の負担部分を除いた、夫の負担割合に応じた金額のみ夫に求償できるのに対し、連帯保証人は支払った全額を夫に求償できるという違いもあります(民法442条、459条)。
住宅ローンと離婚問題が同時に生じた場合の相談先
名義変更や借り換えを検討する場合は、借入先の金融機関への確認が不可欠です。離婚条件そのものが未整理な場合は、行政書士や弁護士への相談も並行して検討する必要があります。
夫が返済を怠った場合のリスク
夫が離婚後に返済を止めた場合や、所在が分からなくなった場合、金融機関は妻に対して直接、全額の返済を求めることができます。これは妻が連帯債務者であっても連帯保証人であっても共通するリスクです。返済が困難になれば、任意売却や借り換え、債務整理や自己破産を検討せざるを得ない場合もあります。
離婚協議書や公正証書で夫が住宅ローンを支払うと約束しても、その約束は金融機関には対抗できません。金融機関との関係では、契約上の債務者・連帯債務者・連帯保証人としての地位がそのまま残ります。
行政書士の役割
離婚を検討する段階で、ローン契約の内容と、自分が連帯債務者・連帯保証人のいずれの立場にあるかを確認し、事実関係を書類として整理することが重要です。返済の分担や、将来夫が返済を怠った場合の求償についての夫婦間の取り決めは、公正証書として書面に残すことができます。ただし、金融機関との名義変更・借り換え交渉や、返済をめぐる相手方との交渉自体は、当事務所の業務範囲には含まれません。事実関係を整理し、書類という形に残しておくことが、後の交渉や弁護士への相談の際に、自分の立場を裏付ける材料になります。
