法律上、正妻とは婚姻届を提出した配偶者を指し、愛人とは法律用語ではなく、その関係自体に法律上の地位は認められていません。この違いは感情の話ではなく、民法上の権利義務の有無という客観的な差です。
正妻の立ち位置
婚姻届を提出した配偶者には、同居・協力・扶助の義務(民法752条)、婚姻費用を分担してもらう権利(民法760条)、離婚時に財産分与を求める権利(民法768条)、相手が死亡した場合の相続権(民法890条)が認められます。これらの権利は婚姻届という公的な手続きによって発生するものであり、内縁関係や交際関係とは根拠が異なります。夫が不貞行為に及んだ場合、正妻は夫および不貞相手の双方に対して、共同不法行為に基づく慰謝料を請求できます(民法709条、710条、719条)。
愛人の立ち位置
愛人とは法律用語ではありません。一般には、配偶者のいる者と継続的な男女関係にある相手を指すことが多く、法律上の地位は認められていません。この関係が不貞行為(性交渉等)に及んだ場合、愛人は、正妻に対して婚姻共同生活の平和を侵害した者として、不法行為に基づく慰謝料を支払う義務を負う立場になります(最高裁昭和54年3月30日判決)。財産分与請求権や相続権はなく、法律上、夫との関係を保護する権利は基本的に存在しません。
例外として扱われる重婚的内縁との違い
配偶者のいる相手と同居し、夫婦同然の生活を続けているケースは、重婚的内縁と呼ばれ、単なる愛人関係とは区別されます。重婚的内縁は原則として法律上保護されませんが、法律婚が実質的に破綻していたなど、個別事情によっては、重婚的内縁として一定の法的保護が認められることがあります。この「法律婚が破綻していたかどうか」という判断基準は、不貞慰謝料請求における婚姻関係破綻の抗弁(最高裁平成8年3月26日判決)と同じ枠組みで争われます。単なる愛人関係の場合は、この重婚的内縁の議論以前の問題として、そもそも保護の対象になりません。
行政書士の役割
正妻としての権利を行使する前提として、婚姻の継続を示す事実関係、生活費の分担、同居の実態などを書類として整理しておくことが重要です。当事務所では、この事実関係を「事実証明に関する書類」「権利義務に関する書類」として形に残すお手伝いをします。ただし、相手方との交渉や、慰謝料額をめぐる法的主張は行政書士の業務範囲には含まれず、事実関係を書類として整理することが業務範囲です。
