AIだけで不倫慰謝料の文書を作る前に確認したいこと

夫の不倫で、離婚を決めた妻へ。

離婚後の生活は、離婚前に決まる。

不倫相手への慰謝料請求だけを整えても、離婚後の生活条件が決まるわけではありません。夫と合意する前に、養育費、財産分与、慰謝料、住まい、住宅ローン、年金分割などを一緒に確認する必要があります。

AIは、出来事や文章の整理に役立ちます。ただし、入力されていない事実を見つけたり、離婚後の生活全体を見て判断したり、本人に代わって交渉したりすることはできません。

この記事では、不倫慰謝料の文書をAIで作る前に、AIに任せられることと、専門家へ相談すべき場面を整理します。

目次

AIは優秀な書類作成係になる

AIを使うと、本人交渉の準備は以前より進めやすくなります。

これまでの出来事を時系列にする。不貞の証拠を一覧にする。慰謝料請求の流れを確認する。相手への通知文を作る。相手から届いた回答を読み込ませ、反論されている点を整理することもできます。

本人の頭の中に散らばっていた情報を、順番に並べられることは、AIの大きな利点です。何も整理しないまま感情に任せて相手へ連絡するより、はるかに準備された交渉になります。

ただし、AIが整理するのは、本人が入力した情報です。

入力した事実が間違っていれば、文章が整っていても、誤った前提に基づく文書が出来上がります。AIは優秀な参謀になれますが、渡された情報の外には出られません。

AIは本人の正義を強める

不倫慰謝料を請求する人がAIに相談するとき、多くの場合、自分が知っている事実を入力します。

「不倫相手が家庭を壊した」
「証拠は十分にある」
「相手は反省していない」
「高額な慰謝料を請求したい」

この前提で質問すれば、AIは、その前提に沿って請求理由や通知文を作ります。

しかし、相手から見れば、別の事実があるかもしれません。不貞が始まる前から夫婦関係が悪化していた。証拠から分かる期間は短い。既婚者であることを知らなかった。既に配偶者から慰謝料を受け取っている。

AIは、入力されていない事情を調査できません。

本人に都合のよい情報だけを入力すれば、本人に都合のよい回答が返ってきます。しかも、AIが整えた文章には法律用語と論理的な構成が加わるため、自分の立場が実際より強くなったように感じることがあります。

AIの文章が強いからといって、自分の証拠も強いとは限りません。弱い証拠に強い文章を重ねれば、請求が強くなるのではなく、本人の確信だけが強くなることもあります。

AIは本人の参謀です。客観的な裁判官ではありません。

相手にもAIという参謀がいる

慰謝料を請求された側も、AIを使えます。

届いた請求書を読み込ませ、反論できる点を整理する。証拠の弱い部分を探す。減額を求める理由を並べる。回答書を作る。請求する側と、ほぼ同じことができます。

請求する側のAIが「○○万円を請求できます」と書類を作れば、相手側のAIは「高額すぎる」「証拠が不足している」「婚姻関係は既に悪化していた」と反論を作ります。

双方がAIを使えば、整った請求書に、整った回答書が返ってきます。文章の完成度だけでは、交渉上の優位は生まれません。

AIによって小さくなるのは、情報や文章力の差です。しかし、証拠の強さ、相手の資力、交渉経験、裁判まで進む意思、最後に回収する能力の差は残ります。

情報を知っていることと、その情報を使って相手を動かすことは別です。

難しいのは、始めることではなく終わらせること

請求書を送ることは、交渉の入口です。

相手が責任を否定したら、どの証拠を出すのか。減額を求めたら、どこまで譲るのか。交渉が決裂したら、裁判へ進むのか。慰謝料請求では、書類を作った後に難しい判断が続きます。

さらに、不倫相手への慰謝料請求だけを見ればよいわけではありません。

配偶者との離婚、婚姻費用、財産分与、養育費、住居など、ほかの問題との関係も考える必要があります。不倫相手との示談内容が、配偶者との離婚条件に影響することもあります。

専門家は、一つの請求だけを見るのではなく、一つの判断が問題全体にどのような影響を与えるかを見ます。その中で、費用を含め、最終的に本人に何が残るのかを考えます。

AIは、交渉を始めるための参謀兼書類作成係にはなれます。しかし、問題全体を見ながら、どこまで争い、どこで譲り、どう終わらせるかという勘所は持ちません。

慰謝料請求で難しいのは、始めることではありません。

争いを終わらせ、実際にお金を受け取ることです。

AIは始める。弁護士は終わらせる

結論からいえば、AIを使った本人交渉でも、不倫慰謝料を受け取れることはあります。

相手が不貞を認め、金額を大きく争わず、支払う資力があり、約束どおり支払えば、本人交渉でも解決できます。弁護士費用がかからないため、結果として手取り額が多くなることもあります。

しかし、それはAIが交渉を終わらせた結果ではありません。

相手が争わなかった。早く終わらせたい事情があった。支払う意思と資力があった。相手が任意に応じた結果です。

相手が責任や金額を争い、支払いを拒んだ後は、本人が証拠を評価し、反論に対応し、譲歩する地点を決め、必要であれば法的手続へ進まなければなりません。

本人が争いに強く、法的手続にも長けているのであれば、AIを参謀にして本人交渉を完結できることもあります。ただし、その場合に問題を終わらせているのはAIではありません。

本人の判断力と実行力です。

AIは、本人が慰謝料請求を始めるための参謀兼書類作成係です。

弁護士は、依頼者に代わって争いに対応し、問題を法的に終わらせる専門家の一人です。

AIは始める。

弁護士は終わらせる。

今のAIは、まだそこには至っていません。

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